助成金ニュース

【第43回】在籍型出向を行う場合の助成金:産業雇用安定助成金②   [2021.05.18]

在籍型出向を行うときに活用できる助成金が「産業雇用安定助成金」の第2回目

今回は「支給対象となる事業主」について見ていきましょう。

本助成金は出向元事業主および出向元事業主から出向労働者を受け入れる事業主(以下「出向先事業主」といいます)が支給対象になります。
本助成金を受給する事業主のうち、出向元事業主は、次の(1)および (3)の要件を満たし、かつ(4)に該当していないことが必要であり、また、出向先事業主は次の(2)および(3)の要件の満たし、かつ(4)に該当していないことが必要です。

(1) 雇用調整の実施
本助成金は、「新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由」により、「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、
その雇用する対象労働者の雇用の維持を図るために、
「労使間の協定」に基づき出向を実施する出向元事業主が支給対象となります。
具体的には、上記の下線部についてそれぞれ次のア~ウを満たしていることが必要です。

ア 「新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由」とは
「新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由」とは、
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気の変動および産業構造の変化ならびに地域経済の衰退、競合する製品・サービス(輸入を含む)の出現、消費者物価・外国為替その他の価格の変動等の経済事情の変化をいいます。
そのため次に掲げる理由による事業活動の停止または縮小は本助成金の支給対象となりません。

【支給対象とならない理由の例】
① 例年繰り返される季節的変動によるもの(自然現象に限らない)
② 事故または災害により施設または設備が被害を受けたことによるもの(被害状況の点検を行っている場合も含む)
③ 法令違反もしくは不法行為またはそれらの疑いによる行政処分または司法処分によって事業活動の全 部または一部の停止を命じられたことによるもの(事業主が自主的に行うものを含む)

新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由とは、具体的には、次のような理由で経営環境が悪化していることをいいます。

【支給対象となる理由の例】
① 観光客のキャンセルが相次いだことにより、客数が減り売上が減少した。
② 市民活動が自粛されたことにより、客数が減り売上が減少した。
③ 行政からの営業自粛要請を受け休業したことにより、客数が減り売上が減少した。 など


イ 「事業活動の縮小」とは
売上高または生産量などの事業活動を示す指標(生産指標)が一定以上減少していることを指します(生産量要件)。具体的には、次のaからcのいずれかに該当する必要があります。
a 生産指標の最近1か月の値が、1年前の同じ1か月の値に比べ5%以上減少していることです。
b 生産指標の最近1か月の値が、2年前の同じ月に比べ5%以上減少していることです。
c 生産指標の最近1か月の値が、計画届を提出した月の1年前の同じ月から計画届を提出した月の前々 月までの間の適当な1か月に比べ5%以上減少していることです。
※1 「最近」とは計画届の提出日の属する月の前月を指します。
例えば、計画届の提出日の属する月が令和3年4月の場合、「最近1か月」とは令和3年3月を指します。 ※2 a~cのいずれの場合も、比較する月は1か月を通して雇用保険適用事業所であり、かつ、1か月を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります。


ウ 「労使間の協定」とは
本助成金は、出向の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って出向を実施することを支給 要件としています。
労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者との間で書面により行う必要があります。
(注:協定を締結した労働組合等の代表が、当該事業所における労働者の過半数を代表するものであるかは、組合員名簿または労働者代表選任書等で確認します。)


(2) 解雇等や雇用量の減少がないこと
本助成金を受給する出向先事業主は、次の要件を満たしていることが必要です。

「解雇等がない」こと

出向期間の開始日の前日から起算して6か月前の日から支給申請を行う支給対象期の末日までの間において、当該出向労働者の受入れに際し、その雇用する被保険者を事業主都合により離職(雇用保険制度における喪失原因コード3(※)に該当)させた事業主以外であること。
(※)労働者の責めに帰すべき理由による解雇、天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能となった事による解雇以外の解雇に勧奨退職等を加えたものをいいます。

「雇用量の減少がない」こと
雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標(雇用指標)が一定以上減少していないことを指します(雇用量要件)。
具体的には、次のa又はbのいずれかに該当する必要があります。
ただし、bにより比較するのは雇用保険適用事業所設置後、1年未満の事業所に限ります。
a 雇用指標の最近3か月間の平均値が1年前の同じ3か月間に比べ、大企業の場合は5%を超えてかつ 6人以上、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上減少していないことです。
b 雇用指標の最近1か月の値が、計画届を提出した月の1年前の同じ月から計画届を提出した月の前々月までの間の適当な1か月に比べ大企業の場合は5%を超えてかつ6人以上、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上減少していないことです。
※1 「最近」とは計画届の提出日の属する月の前月を指します。
例えば、計画届の提出日の属する月が令和3年4月の場合、「最近3か月間」とは令和3年1月~3月を、また「最近1か月」とは令和3 年3月を指します。
※2 a、bいずれの場合も、比較する月は3か月間(bの場合は1か月)を通して雇用保険適用事業所であり、かつ、3か月間(bの場合は1か月)を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります。


(3) その他の要件
本助成金を受給する事業主は、その他次の要件を満たしていることが必要です。
① 出向元事業所および出向先事業所が雇用保険適用事業所であること。
② 出向元事業主と出向先事業主が資本的、経済的、組織的関連性等からみて、独立性が認められること。
③ 「受給に必要な書類」について、
a 整備し、
b 受給のための手続に当たって労働局等に提出するとともに、
c 保管して労働局等から提出を求められた場合にそれに応じて速やかに提出すること。
なお、「受給に必要な書類」とは、出向の対象となった労働者の、出勤及び雇用調整の状況、賃金等 を明らかにする書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等)等です。
④ 労働局等の実地調査を受け入れること
⑤ 出向元事業所で、本助成金の支給対象となる期間に他の事業所の雇用保険被保険者を出向により受け入れ、他の事業所の事業主がその出向について本助成金、雇用調整助成金(出向)又は通年雇用助成金の支給を受けていない(受けようとしていないことを含む)こと
⑥ 出向先事業所で、自己を出向元事業所とする出向を行い、出向元事業主として本助成金、雇用調整助成金(出向)又は通年雇用助成金の支給を受けていない(受けようとしていないことを含む)こと


(4) 不支給要件
本助成金を受給する事業主は、次のいずれの場合にも該当していないことが必要です。
① 平成31年3月31日以前に申請した雇用関係助成金について不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けたことがあり、当該不支給決定日又は支給決定取消日から3年を経過していない。
② 平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けたことがあり、当該不支給決定日または支給決定取消日から5年を経過していない。
③ 平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について不正受給に関与した役員等がいる。
④ 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度における労働保険料の滞納がある。
⑤ 支給申請日の前日から起算して過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている。 ⑥ 風俗営業等関係事業主である。
⑦ a.事業主もしくは事業主団体(以下「事業主等」という。)または事業主等の役員等が、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「暴力団対策法」という。)第2条第2号に規定する暴力団 または第2条第6号に規定する暴力団員である。
b.役員等が、自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもって、暴力団または暴力団員を利用するなどしている。
c. 役員等が、暴力団または暴力団員に対して、資金等を供給し、または便宜を供与するなど直接的あるいは積極的に暴力団の維持、運営に協力し、もしくは関与している。
d. 役員等が、暴力団または暴力団員であることを知りながらこれを不当に利用するなどしている。
e. 役員等が、暴力団または暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有している。
⑧ 事業主等または事業主等の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行ったまたは行う恐れがある団体等に属している。
⑨ 倒産している。
⑩ 産業雇用安定助成金について不正受給を理由に支給決定を取り消された場合、労働局が事業主名等を公表することに承諾していない。
⑪ 役員等の氏名、役職、性別及び生年月日が記載されている別紙「役員等一覧」又は同内容の記載がある書類を添付していない。
⑫ 「雇用関係助成金支給要領」に従うことに承諾していない。


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