派遣ニュース

2019年11月

【労使協定方式の手順④】労使協定で定める賃金の決定方法②   [ 2019.11.22 ]

(1)賃金の捉え方と決定方法の考え方(続き)

「一般賃金」には全ての賃金が含まれますが、このうち通勤手当及び退職金については、その他の賃金と分離して比較することを可能としているため、ここでは、

A 基本給・賞与・手当等

B 通勤手当

C 退職金

に分けて比較方法を整理します。「一般賃金」を構成する上記(A)~(C)の比較方法は以下のとおりです。

(A)基本給・賞与・手当等

一般賃金のうちの基本給・賞与・手当等(以下、「一般基本給・賞与等」といいます)の額は局長通知で示されるので、この額と派遣労働者の基本給・賞与・手当等(以下、「基本給・賞与等」といいます)を比較します。

 

(B)通勤手当

一般賃金のうちの通勤手当(以下、「一般通勤手当」といいます)は、派遣労働者に対する通勤手当の支給方法(①実費支給か、②定額支給か)によって異なります。そのため、「一般通勤手当」 と派遣労働者に支給される通勤手当の比較方法は支給方法によって異なります。

①の場合には、派遣労働者の通勤手当は「一般通勤手当」とみなされるので、「一般通勤手当」との比較が不要です。

②の場合には、局長通知で「一般通勤手当」の額が示されるので、その額と派遣労働者に支給される通勤手当を比較します。

 

(C)退職金

一般賃金のうちの退職金(以下、「一般退職金」といいます)は、派遣労働者に対する退職金の支給方法によって異なります。支給方法には以下の3つの方法があり、それに合わせて「一般退職金」 と派遣労働者に支給される退職金を比較します。

①「退職金制度に基づいて退職金を支給する方法(以下、「退職金制度の方法」といいます)」の場合

局長通知で「一般退職金」の受給に必要な所要年数、支給月数、支給額等の制度に関する統計が示されるので、それと派遣労働者に適用される退職金制度を比較します。

② 「退職金の費用を毎月の賃金等で前払いする方法(以下、「退職金前払いの方法」といいます。)」の場合

局長通知で「一般退職金」の費用が示されるので、その額と派遣労働者に支払う退職金相当の手当等の額を比較します。

③「中小企業退職金共済制度や確定拠出年金等に加入する方法(以下、「中小企業退職金共済制度等への加入の方法」といいます。)」の場合

中小企業退職金共済制度等に局長通知で示される「一般退職金」の退職費用の水準以上の掛金額で加入する場合は、一般退職金と同等以上とされます。

 

(2)昇給(通勤手当等は除く)

労使協定で定める派遣労働者の賃金については、通勤手当や家族手当等の職務の内容に密接に関連しないものを除き、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等の向上があった場合に改善される必要があります。 また、労使協定で定めた内容に基づき、派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定することが必要です。

【労使協定方式の手順③】労使協定で定める賃金の決定方法①   [ 2019.11.21 ]

(1)賃金の捉え方と決定方法の考え方

労使協定の対象となる派遣労働者の賃金には、基本給、手当、賞与(特別給与)、退職金が含まれます(時 間外勤務手当、深夜勤務手当、休日勤務手当等は除きます)。この賃金は、以下の2つの基準を満たす必要があります。

① 派遣労働者が従事する業務と「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(以下、「一般賃金」といいます)と同等以上となること

② 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合には、通勤手当等を除く職務に密接に関連する賃金が改善されること

 

上記①にある「一般賃金」とは派遣労働者の賃金の比較対象であり、具体的には、

・派遣先事業所等の派遣就業場所の所在地域において、

・派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者であって、

・当該派遣労働者と(同種の業務をする上で必要となる)同程度の能力及び経験を有する者の平均的な賃金額 です。

つまり、同様の地域、同種の業務、同程度の能力・経験の3つの要素を加味した一般労働者の賃金で す。

その具体的な内容は、毎年6~7月に発出される職業安定局長通知(以下「、局長通知」といいます。)に示されます。局長通知の適用については、翌年の4月からとなりますので、その間に労使協定の検討と協議等を進めます。

【労使協定方式の手順②】全体の流れ   [ 2019.11.20 ]

労使協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する際の手順の一般的な全体の流れは次の通りです。


≪第1段階≫ 「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(一般賃金)の算定方法を理解し、派遣労働者の現在の職種と賃金を整理します。

≪第2段階≫ 派遣労働者の職種に対応する通知上の職種を確認し、派遣労働者と「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(一般賃金)を確認します。

≪第3段階≫ 賃金テーブルを点検し是正・整備します。

≪第4段階≫ 労使協定の対象となる「賃金以外の待遇」を点検し是正・整備します。

≪第5段階≫ 第3段階と第4段階の結果を踏まえて就業規則の整備と労使協定の締結を行い、労働者に周知します。

≪第6段階≫ 派遣先から教育訓練・福利厚生施設に関する情報を入手します。

≪第7段階≫ 労使協定で定めた待遇決定方法と第6段階で入手した情報を基に、派遣労働者の待遇を決定します。

【労使協定方式の手順①】労使協定方式の概要   [ 2019.11.19 ]

「労使協定方式」においては、派遣元は、過半数労働組合又は過半数代表者(過半数労働組合がない 場合に限ります。)と、次の①~⑥の事項を定めた書面による協定を締結しなければなりません。

また、労使協定については、毎年度提出する事業報告書に添付し、あわせて労使協定の対象となる派 遣労働者の職種ごとの人数と職種ごとの賃金額の平均額を厚生労働大臣(都道府県労働局)に報告しなければなりません。

 

労使協定に定める事項は以下の通りです。

①労使協定の対象となる派遣労働者の範囲

②賃金の決定方法(ア及びイに該当するものに限る)

ア  派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額であること

イ  派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に、通勤手当等を除く職務の内容に密接に関連して支払われる賃金が改善されること

③派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること

④「労使協定の対象とならない待遇(派遣先が行う業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓 練と給食施設、休憩室及び更衣室及び賃金」を除く待遇の決定方法(派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く)との間で不合理な相違がないものに限る)

⑤派遣労働者に対して段階的・体系的な教育訓練を実施すること

⑥その他の事項

・有効期間(2年以内が望ましい)

・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合はその理由 ・特段の事情がない限り、1つの労働契約期間中に派遣先の変更を理由として、協定対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】労使協定の有効期間中に、一般賃金の額が変わった場合、労使協定を締結し直す?   [ 2019.11.18 ]

労使協定の有効期間中に一般賃金の額が変わった場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金の額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否か確認することが必要です。


派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額でない場合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定を締結し直す必要があります。

一方で、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額である場合には、派遣元事業主は、同額以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付する必要があります。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】労使協定ではなく就業規則、賃金規程等に具体的な内容を記載してもよい?   [ 2019.11.15 ]

労使協定には具体的な内容を定めず、就業規則、賃金規程等に具体的な内容を記載する旨を定めても大丈夫です。

ただし、労使協定に定めるべき事項については、労使協定自体に具体的に定めなかったとしても、就業規則、賃金規程等に具体的に定めることにより、労使協定自体、就業規則、賃金規程等でこれらの事項を網羅的に定めることが必要となります。

また、派遣元事業主は、厚生労働大臣に毎年度提出する事業報告書に労使協定を添付しなければならないこととされているところ、労使協定自体ではなく、就業規則、賃金規程等に定められている場合には、労使協定本体に加えて、労使協定で引用している就業規則、賃金規程等もあわせて事業報告書に添付しなければなりません。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】労使協定には、比較対象となる一般賃金の額を記載するが必要?   [ 2019.11.14 ]

労使協定には、派遣労働者の賃金の額のほか、その比較対象となる一般賃金の額を記載する必要があります。

一般賃金の額と同等以上である協定対象派遣労働者の賃金の決定の方法を定めることとされているため、同等以上であることが客観的に明らかとなるよう、協定対象派遣労働者の賃金の額に加え、その比較対象となる一般賃金の額も記載することが必要となります。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】派遣先が多く、派遣契約労使協定の過半数代表者の選出が難しいのですが?   [ 2019.11.13 ]

どのような理由にせよ、過半数代表者を選出しなければなりません。

その方法として、派遣労働者の賃金明細を交付する際や派遣元事業主が派遣先を巡回する際に、労使協定の意義や趣旨を改めて周知するとともに、立候補の呼びかけや投票用紙の配付をしたり、社内のイントラネットやメールにより立候補の呼びかけや投票を行わせることが考えられます。

また、派遣元事業主は、過半数代表者が労使協定の事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないとされており、
例えば、
過半数代表者が労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器(イントラネットや社内メールを含む。)や事務スペースの提供を行うことが含まれるます。
その他、時間外・休日労働に関する協定の締結や、就業規則の作成又は変更を行う場合にも、(過半数労働組合が存在しない場合は)当然に過半数代表者の選出が必要となります。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】 複数の事業所を労使協定の一つの締結単位とすることは可能?   [ 2019.11.12 ]

複数の事業所を労使協定の一つの締結単位とすることは可能です。


ただし、待遇を引き下げることなどを目的として、数か所の事業所を一つの締結単位とすることは、
労使協定方式の趣旨に反するものであり、適当ではなく、認められないことになります。

 
また、この場合、比較対象となる一般賃金を算定する際の地域指数については、協定対象派遣労働者
の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む都道府県又は公共職業安定所管轄地域の指数
を選択することになります。

さらに、数か所の事業所を労使協定の一つの締結単位とする場合、派遣労働者が多数となり、派遣先の業種、派遣先地域も多岐にわたって賃金体系等が複雑となり、複数の事業所の派遣労働者全体の利益を適切に代表する過半数代表者を選出することが困難となる可能性があることから、数か所の事業所を労使協定の締結単位とする場合には、過半数代表者が民主的手続に基づいて選出されるよう、特に注意が必要です。

仮に過半数代表者を適切に選出していないと認められた場合には労使協定方式が適用されず、派遣先に雇用される通常の労働者との均等・均衡待遇を確保しなければならないことになります。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】協定対象派遣労働者を限定するかどうかを労働者派遣契約に記載しないとダメ?   [ 2019.11.11 ]

労働者派遣契約には、「派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定するか否かの別」などを新たに記載する必要があります。

施行日前から締結している労働者派遣契約については、労働者派遣契約を新たに締結し直すことまで求めるものではありませんが、施行日までに、労働者派遣契約の変更等により、新たに労働者派遣契約の締結事項となった「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」及び「派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定するか否かの別」を労働者派遣契約に定めておかなければなりません。

【派遣の同一労働同一賃金Q&A】施行前に労使協定を締結してもよい?   [ 2019.11.08 ]

働き方改革関連法(平成30年改正派遣法)の施行日(2020年4月1日)前に、派遣元事業主が過半数労働組合又は過半数代表者との間で協定を締結することは可能です。
なお、この協定の効力が発生するのは、施行日以降であることに留意してください。

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(労使協定方式の場合)   [ 2019.11.07 ]

① 賃金

<協定対象派遣労働者の賃金の決定方法等>
• 同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金の額となるものでなければなりません。
• 職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものでなければなりません。
• 協定対象派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、賃金を決定しなければなりません。

 

② 福利厚生 教育訓練

• 食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設(※)については、派遣先の通常の労働者と働く事業所が同一であれば同一の利用を認めなければなりません。
• 派遣元の通常の労働者との間で、転勤の有無等の支給要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を行わなければなりません。
• 病気休職については、有期雇用でない派遣労働者には派遣元の通常の労働者と同一の、 有期雇用である派遣労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて取得を認めなければなりません。
• 法定外の有給休暇その他の休暇であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについては、派遣元の通常の労働者と同一の勤続期間であれば同一の付与を行わなければなりません。なお、期間の定めのある労働契約を更新している場合には、当初の労働契約の開始時から通算して勤続期間を評価することを要します。
• 教育訓練であって、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施するもの (※)については、派遣先の通常の労働者と同一の業務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行わなければなりません。
• 安全管理に関する措置・給付については、派遣元の通常の労働者と同一の勤務環境に置かれている場合には同一の措置・給付を行わなければなりません。


(※)上記の福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)及び現在の業務の遂行に必要な技能・知識を付与するための教育訓練は、労使協定方式であっても、労使協定の対象とはならないため、派遣元事業主は、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保する必要があります。
また、これらの待遇については、派遣先に対しても、利用機会の付与及び実施の義務が課されています。

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(派遣先均等・均衡方式の場合)   [ 2019.11.06 ]

① 基本給

• 基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数(派遣就業期間)に応じて支払うものなど、それぞれの趣旨・性格に照らして、派遣先の通常の労働者と実態が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。

• 昇給であって、労働者の勤続(派遣就業の継続)による能力の向上に応じて行うものについては、派遣先の通常の労働者と勤続による能力の向上が同一であれば同一の、 違いがあれば違いに応じた昇給を行わなければなりません。

 

② 賞与

• ボーナス(賞与)であって、会社(派遣先)の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、派遣先の通常の労働者と会社の業績等への貢献が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。

 

③ 各種手当

• 役職手当であって、役職の内容に対して支給するものについては、派遣先の通常の労働者と役職の内容が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。

• そのほか、派遣先の通常の労働者との間で、業務の危険度又は作業環境が同一の場合の特殊作業手当、交替制勤務等の勤務形態が同一の場合の特殊勤務手当、業務の内容が同一の場合の精皆勤手当、派遣先の通常の労働者の所定労働時間を超えて同一の時間外労働を行った場合に支給される時間外労働手当の割増率、同一の深夜・休日労働を行った場合に支給される深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、労働時間の途中に食事のための休憩時間がある際の食事手当、同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当、特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当等については、同一の支給を行わなければなりません。

 

④ 福利厚生 教育訓練

• 食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設(※)については、派遣先の通常の労働者と働く事業所が同一であれば、同一の利用を認めなければなりません。

• 派遣先の通常の労働者との間で、転勤の有無等の支給要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を行わなければなりません。

• 病気休職については、期間の定めのない労働者派遣に係る派遣労働者には、派遣先の通常の労働者と同一の、期間の定めのある労働者派遣に係る派遣労働者にも、派遣就 業が終了するまでの期間を踏まえて取得を認めなければなりません。

• 法定外の有給休暇その他の休暇であって、勤続期間(派遣就業期間)に応じて取得を認めているものについては、派遣先の通常の労働者と同一の勤続期間(派遣就業期 間)であれば同一の付与を行わなければなりません。なお、期間の定めのある労働者派遣契約を更新している場合には、当初の派遣就業の開始日から通算して就業期間を評価することを要します。

• 教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能・知識を習得するために実施するもの(※)については、派遣先の通常の労働者と同一の業務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行わなければなりません。

• 安全管理に関する措置・給付については、派遣先の通常の労働者と同一の勤務環境に置かれている場合には同一の措置・給付を行わなければなりません。

(※)派遣先に対しても、上記の福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)及び現在の業務の遂行に必要な技能・知識を付与するための教育訓練について、利用機会の付与及び実施の義務が課されています。

 

<派遣先の通常の労働者と派遣労働者との間で賃金の決定基準・ルールの相違がある場合>

• 派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間で賃金に相違がある場合において、その要因として賃金の決定基準・ルールの相違があるときは、「派遣労働者に対する派遣元事業主の将来の役割期待は、派遣先に雇用される通常の労働者に対する派遣先の将来の役割期待と異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明ではなく、賃金の決定基準・ルールの相違は、 職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはなりません。

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針   [ 2019.11.05 ]

このガイドラインは、通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものです。

基本給、昇給、ボーナス(賞与)、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生等についても記載されています。

このガイドラインに記載がない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、不合理な待遇差の解消等が求められます。このため、各社の労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれています。

 

不合理な待遇差の解消に当たり、次の点に留意が必要です。

• 通常の労働者の待遇を不利益に変更する場合は、原則として労使の合意が必要であり、就業規則の変更により合意なく不利益に変更する場合であっても、その変更は合理的なものである必要があります。ただし、通常の労働者と短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消するに当たり、基本的に、労使の合意なく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえないとされています。

• 雇用管理区分が複数ある場合(例:総合職、地域限定正社員など)であっても、すべての雇用管理区分に属する通常の労働者との間で不合理な待遇差の解消が求められます。

• 通常の労働者と短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間で職務の内容等を分離した場合であっても、通常の労働者との間の不合理な待遇差の解消が求められます。

派遣労働者の同一労働同一賃金⑯調停   [ 2019.11.01 ]

自主的解決が求められる事項

<派遣元事業主> 

次の事項に関し、派遣労働者から苦情の申出を受けたとき、又は派遣労働者が派遣先に対して申し出た苦情の内容が派遣先から通知されたときは、苦情の自主的解決を図るよう努めなければなりません。

・ 派遣先均等・均衡方式

・ 労使協定方式

・ 雇入れ時の説明

・ 派遣時の説明

・ 派遣労働者から求めがあった場合の説明

・ 不利益な取扱いの禁止

 

<派遣先>

次の事項に関し、派遣労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情の自主的解決を図るよう努めなければなりません。

・ 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施

・ 給食施設、休憩室及び更衣室の利用の機会の付与

自主的解決が困難な場合

紛争調整委員会による調停

上記の事項についての「派遣労働者と派遣元事業主との間の紛争」又は「派遣労働者と派遣先との間の紛争」については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の適用を除外し、専門性と対応できる機能を併せ持った調停の仕組みの対象となります。

都道府県労働局長が、紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において、紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に規定する紛争調整委員会において調停が行われることとなります。


派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者が都道府県労働局長に調停の申請をしたことを理由として、派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはいけません。

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