派遣ニュース

【労使協定方式の手順⑪】派遣労働者を比較する一般賃金を算出する①   [2020.02.24]

第1段階で整理した社内職種に対応する通知職種を確認し、その一般賃金を算出します。

算出に当たっ ては、局長通知を参照します。

まずは、一般基本給・賞与等から見ていきましょう。


(A)一般基本給・賞与等

手順①:社内職種が局長通知で示す職種(以下、「通知職種」といいます。)のどれに当たるかを確認します。

具体的な確認方法は以下です。

① 局長通知では、「賃金構造基本統計調査」と「職業安定業務統計」に基づく2種類の職種別賃金の一覧が示されます。

各職種の業務の内容については、「職業安定業務統計」については職業分類表(独立行政法人労働政策研究・研修機構)、「賃金構造基本統計調査」については当該調査の「役職及び職種解説」で確認します。

② 業務の実態に合った通知職種を選択します。

複数の通知職種の業務を行っている場合は、主に従事する業務に最も近い職種を選択します。

「 職業安定業務統計」においては、大分類、中分類、小分類のいずれを使うことも可能です。

この際、例えば、派遣労働者の賃金を引き下げることを目的として、同じ中分類の中で、 賃金の低い職種は小分類、高い職種は中分類というように、恣意的に通知職種を用い ることは認められません。


手順②:一般基本給・賞与等を以下の数式に示す方法で算出します。

(ア)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給・賞与等 ×(イ)能力・経験調整指数×(ウ)地域指数※

このうち、(ア)×(イ)の額は、局長通知で示されます。

なお、基準値(0年)、1年、2年、3年、5年、10年という形で、勤続年数別に能力・経験調整指数を補正した数値が示されます。

 

手順③: 手順②で確認した(ア)×(イ)の額に、(ウ)※を乗じます。

※(ウ)地域指数は、都道府県別とハローワークの管轄別に示されますので、派遣労働者の就業場所に応じて地域指数を選びます。

この際、例えば、同じ都道府県の中で、賃金の低い地域はハローワークの管轄別の数値、賃金の高い地域は都道府県別というように、恣意的に、地域指数を使用してはなりません。

 

手順④:手順③の計算結果を個人別賃金一覧表」に転記して、表を完成させます。

地域指数を乗じて得た額が就業場所の都道府県別の最低賃金を下回る場合には、基準値0年の額として、最低賃金額を記載し、その数値に能力・経験指数を乗じた額を使用します。

都道府県によっては、特定の産業の業務に、特定最低賃金が定められている場合があります。

地域指数を乗じて得た額が特定最低賃金の額を下回る場合には、基準値0年の額として、特定最低賃金額を記載し、その数値に能力・経験指数を乗じた額を使用します。

【労使協定方式の手順⑩】派遣労働者の通知職種の一般賃金を確認する③   [2020.02.17]

今回は、一般退職金の確認方法を見ていきます。

(C)一般退職金

退職金については、一般退職金と派遣労働者の退職金を比較する方法が3つあり、選択した比較方法に合わせて一般退職金を確認します。

①退職金制度の方法をとる場合

局長通知では、退職金制度の点検に有益な以下の統計を示すこととしており、調査対象の企業規模や実施時期などに留意しつつ、活用して点検します。

この局長通知で示す統計として、以下の5つの指標を示しています。

・就労条件総合調査(厚生労働省)

・退職金・年金及び定年制事情調査(中央労働委員会)

・民間企業退職給付調査(人事院)

・中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

・退職金・年金に関する実態調査(日本経済団体連合会)

 

②退職金前払いの方法をとる場合

局長通知では、前払いする一般退職金に相当するものとして、一般退職金の費用の水準が示されます。

2018年の労働政策審議会同一労働同一賃金部会の検討の際に示された一般退職金の費用の水準は、一般基本給・賞与等の6%です。

 

③中小企業退職金共済制度等への加入の方法をとる場合

局長通知では、派遣労働者が加入する中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金、確定拠出年金などの各種退職金制度の掛金の水準として、②の一般退職金の費用が示されます。

2018年の労働政策審議会同一労働同一賃金部会の検討の際に示された一般退職金の費用(掛金)の水準は、②と同様に、一般基本給・賞与等の6%です。

【労使協定方式の手順⑨】派遣労働者の通知職種の一般賃金を確認する②   [2020.02.10]

今回は、一般通勤手当の確認方法を見ていきます。 

(B)一般通勤手当

通勤手当については、派遣労働者の通勤手当を定額支給とする場合は、局長通知で示される一般通勤 手当の額を使用します。

派遣労働者の通勤手当を実費支給とする場合は、派遣労働者の通勤手当の実費 を一般通勤手当とみなして、分離して比較します。

なお、2018年の労働政策審議会同一労働同一賃金部会の検討の際に示された一般通勤手当の額は 71円です。

【労使協定方式の手順⑧】派遣労働者の通知職種の一般賃金を確認する①   [2020.02.03]

今回は、一般基本給・賞与等の確認方法を見ていきます。 

(A)一般基本給・賞与等

局長通知で示す「一般基本給・賞与等」は、以下の計算式で計算されます。

これらのそれぞれの具体的な数値については、前年度のものが局長通知で毎年6~7月に示されます。
(イ)一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給・賞与等 × (ロ) 能力・経験調整指数 × (ハ) 地域指数

局長通知では、「賃金構造基本統計調査」と「職業安定業務統計」の賃金水準を基にした(イ)の勤続0年目相当の水準(以下、「基準値」といいます。)が、一般労働者の所定内給与(基本給等)と特別給与 (賞与)の合計額を時給換算した形で、職種ごとに示されます。

また、能力・経験を勘案する必要があるため、能力・経験の代理指標として勤続年数別に設定されている(ロ)の能力・経験調整指数を(イ)に乗じた額が勤続年数別(1年、2年、3年、5年、10年)に示されます。

そのため、派遣労働者の基本給・賞与等を決めるに当たっては、派遣労働者が同一の職種の一般の労働者の勤続何年目に当たるかを、労使で議論して決める必要があります。


このようにして計算された(イ)×(ロ)の額は全国平均の数値であるので、地域ごとの賃金水準に合わせる必要があります。

局長通知では、(ハ)の地域指数が都道府県別、ハローワークの管轄別に示されます。したがって、(イ)×(ロ)×(ハ)で「一般基本給・賞与等」を計算します。

なお、局長通知で示す「賃金構造基本統計調査」と「職業安定業務統計」については、それぞれに特徴があります。

「賃金構造基本統計調査」は、賃金そのものがわかる調査ですが、調査対象となる職種についてすべてをカバーしているわけではありません。

一方、「職業安定業務統計」は、調査対象となる職種について幅広くカバーしており、大分類、中分類、 小分類と整理されていますが、示される賃金額は、賃金そのものではなく、ハローワークでの求人賃金の額です。


局長通知で示された数値が職種等の面で労働者の実態と合わない場合は、実態に合う職業等の賃金等が調査されている他の公的統計、民間統計を活用することも可能です。 この場合の統計は、以下のいずれかの要件を満たしていることが必要になります。

・ 公的統計(国又は地方公共団体が作成したもの)であること

・(民間統計の場合)集計項目ごとに実標本数を一定数以上確保するよう標本設計した上で、無作為抽出で調査を実施する場合  ※説明したい職種の賃金が調査されていることが必要です。

【労使協定方式の手順⑦】派遣労働者の賃金の現状を確認する③   [2020.01.27]

前回は、「(B)通勤手当   」について、通勤手当の現状確認の手順をお伝えしましたが、

今回は、(C)退職金」について、手順をお伝えします。

(C)退職金

手順①:点検の方法は退職金の支給方法によって異なります。

①退職金制度の方法をとる場合

自社の退職金制度を点検します。

 

②退職金前払いの方法をとる場合

派遣労働者に前払いする退職金相当の手当等の平均額を時給単位で計算し、「個人別賃金一覧表」に記載します。

一般退職金との比較の際には、派遣労働者の退職金の費用の平均額を活用することも可能です。

その場合は、退職金相当の手当の平均額を計算して記載します。


③中小企業退職金共済制度等への加入の方法をとる場合

派遣労働者を対象とする中小企業退職金共済、確定拠出年金、確定給付企業年金等に加入している場合は、加入している旨と、掛金の賃金・賞与等との割合を「個人別賃金 一覧表」に記載します。

この方法の場合には、中小企業退職金制度等の掛金額が局長通知で示される水準以上であることが必要です。

一般退職金との比較の際には、派遣労働者の退職金の費用の平均額を活用することも可能です。

掛金額には、前払いする退職金 を合算することも可能です。

【労使協定方式の手順⑥】派遣労働者の賃金の現状を確認する②   [2020.01.20]

前回は、「(A)基本給・賞与等」について、賃金の現状確認の手順をお伝えしましたが、

今回は、「(B)通勤手当」について、手順をお伝えします。

(B)通勤手当

手順①:実費支給、定額支給の別を確認します。

手順②:定額支給の場合は時給換算の支給額を個人別に記載します。

一般賃金との比較の際には、派遣労働者の平均額を活用することも可能です。

その場合は、 通勤手当の平均額を計算して記載します。

また、実費支給である場合は実費である旨を記載します。

【労使協定方式の手順⑤】派遣労働者の賃金の現状を確認する①   [2020.01.14]

「一般賃金」の比較方法に沿って、既に雇用している派遣労働者の賃金の現状を点検します。

法律上は、派遣労働者に適用される賃金テーブル等の賃金額が、一般賃金の同等以上であれば足りますが、より適切な対応としては、個々の派遣労働者の賃金を点検した上で、賃金の見直しの検討・是正を行うことが考えられます。そこで、以下では個々の派遣労働者の賃金を点検することを前提に手順を説明します。

(A)基本給・賞与等

手順①: 個々の派遣労働者の、社内職種、業務の難易度等の等級、就業する場所の地域を確認し、派遣労働者個人別に一覧にして記載します。業務の難易度等の等級は、一般労働者の何年目に相当 するかということを踏まえて整理すると、一般基本給・賞与等との比較が容易にできます。なお、職種や等級を決める際には、選んだ職種や等級が適切なものか、現場で働く派遣労働者を含めた労使でよく議論するようにしてください。

手順②:派遣労働者の基本給、賞与、手当の内容を整理し、その結果を手順①に続けて派遣労働者個人別に一覧にして記載します。

この際の整理の仕方は、

【基本給】各個人の基本給を時給額に換算して記載します。超過勤務手当などの所定外給与は含みません。

【手当】各個人の手当(役職手当等の定額的に支払われるものに限ります。通勤手当は除きます。)を時給額 に換算して記載します。一般賃金との比較の際には、 派遣労働者の平均額を活用することも可能です。その場合には、手当の平均額を計算して記載します。

【賞与】各個人の賞与を時給額に換算して記載します。 一般賃金との比較の際には、派遣労働者の平均額を活用することも可能です。その場合には、賞与の平均額を計算して記載します。

手順③:基本給・賞与・手当の合計を個人ごとに計算します。

【労使協定方式の手順④】労使協定で定める賃金の決定方法②   [2019.11.22]

(1)賃金の捉え方と決定方法の考え方(続き)

「一般賃金」には全ての賃金が含まれますが、このうち通勤手当及び退職金については、その他の賃金と分離して比較することを可能としているため、ここでは、

A 基本給・賞与・手当等

B 通勤手当

C 退職金

に分けて比較方法を整理します。「一般賃金」を構成する上記(A)~(C)の比較方法は以下のとおりです。

(A)基本給・賞与・手当等

一般賃金のうちの基本給・賞与・手当等(以下、「一般基本給・賞与等」といいます)の額は局長通知で示されるので、この額と派遣労働者の基本給・賞与・手当等(以下、「基本給・賞与等」といいます)を比較します。

 

(B)通勤手当

一般賃金のうちの通勤手当(以下、「一般通勤手当」といいます)は、派遣労働者に対する通勤手当の支給方法(①実費支給か、②定額支給か)によって異なります。そのため、「一般通勤手当」 と派遣労働者に支給される通勤手当の比較方法は支給方法によって異なります。

①の場合には、派遣労働者の通勤手当は「一般通勤手当」とみなされるので、「一般通勤手当」との比較が不要です。

②の場合には、局長通知で「一般通勤手当」の額が示されるので、その額と派遣労働者に支給される通勤手当を比較します。

 

(C)退職金

一般賃金のうちの退職金(以下、「一般退職金」といいます)は、派遣労働者に対する退職金の支給方法によって異なります。支給方法には以下の3つの方法があり、それに合わせて「一般退職金」 と派遣労働者に支給される退職金を比較します。

①「退職金制度に基づいて退職金を支給する方法(以下、「退職金制度の方法」といいます)」の場合

局長通知で「一般退職金」の受給に必要な所要年数、支給月数、支給額等の制度に関する統計が示されるので、それと派遣労働者に適用される退職金制度を比較します。

② 「退職金の費用を毎月の賃金等で前払いする方法(以下、「退職金前払いの方法」といいます。)」の場合

局長通知で「一般退職金」の費用が示されるので、その額と派遣労働者に支払う退職金相当の手当等の額を比較します。

③「中小企業退職金共済制度や確定拠出年金等に加入する方法(以下、「中小企業退職金共済制度等への加入の方法」といいます。)」の場合

中小企業退職金共済制度等に局長通知で示される「一般退職金」の退職費用の水準以上の掛金額で加入する場合は、一般退職金と同等以上とされます。

 

(2)昇給(通勤手当等は除く)

労使協定で定める派遣労働者の賃金については、通勤手当や家族手当等の職務の内容に密接に関連しないものを除き、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等の向上があった場合に改善される必要があります。 また、労使協定で定めた内容に基づき、派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定することが必要です。

【労使協定方式の手順③】労使協定で定める賃金の決定方法①   [2019.11.21]

(1)賃金の捉え方と決定方法の考え方

労使協定の対象となる派遣労働者の賃金には、基本給、手当、賞与(特別給与)、退職金が含まれます(時 間外勤務手当、深夜勤務手当、休日勤務手当等は除きます)。この賃金は、以下の2つの基準を満たす必要があります。

① 派遣労働者が従事する業務と「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(以下、「一般賃金」といいます)と同等以上となること

② 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合には、通勤手当等を除く職務に密接に関連する賃金が改善されること

 

上記①にある「一般賃金」とは派遣労働者の賃金の比較対象であり、具体的には、

・派遣先事業所等の派遣就業場所の所在地域において、

・派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者であって、

・当該派遣労働者と(同種の業務をする上で必要となる)同程度の能力及び経験を有する者の平均的な賃金額 です。

つまり、同様の地域、同種の業務、同程度の能力・経験の3つの要素を加味した一般労働者の賃金で す。

その具体的な内容は、毎年6~7月に発出される職業安定局長通知(以下「、局長通知」といいます。)に示されます。局長通知の適用については、翌年の4月からとなりますので、その間に労使協定の検討と協議等を進めます。

【労使協定方式の手順②】全体の流れ   [2019.11.20]

労使協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する際の手順の一般的な全体の流れは次の通りです。


≪第1段階≫ 「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(一般賃金)の算定方法を理解し、派遣労働者の現在の職種と賃金を整理します。

≪第2段階≫ 派遣労働者の職種に対応する通知上の職種を確認し、派遣労働者と「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(一般賃金)を確認します。

≪第3段階≫ 賃金テーブルを点検し是正・整備します。

≪第4段階≫ 労使協定の対象となる「賃金以外の待遇」を点検し是正・整備します。

≪第5段階≫ 第3段階と第4段階の結果を踏まえて就業規則の整備と労使協定の締結を行い、労働者に周知します。

≪第6段階≫ 派遣先から教育訓練・福利厚生施設に関する情報を入手します。

≪第7段階≫ 労使協定で定めた待遇決定方法と第6段階で入手した情報を基に、派遣労働者の待遇を決定します。

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